Web header banner

24 山になるとき

24 山になるとき

写真家・野川かさねが山の世界のひとかけらを皆様にお届けする連載フォトエッセイ「山と写真」。第24回は「山になるとき」。 今年もまた雪の時間が訪れた。 標高の高い山はこれから半年ほどのあいだ、 雪とともにある。 山はいつもよりも静かに緩やかに呼吸をしている。 そのペースに合わせるように、自分の歩みもいつもよりさらにゆっくりになる。 吐く息は白く、湿気を含んだその息がネックウォーマを濡らす。 木々に積もる雪が風に吹かれて、 太陽の光を受け、きらきらと光を放ちながら舞い落ちた。 森の中にはキツネやウサギ、テンなどの動物たちが 雪の上に無数の足跡をつけている。 苔や石楠花が寒さに身を縮めて、じっとしている。 そんな山の様子を写真にひとつずつおさめる。 そうしていると、どこにいるのか、 自分が自分なのか、わからなくなるほど 集中している感覚が訪れた。 まわりの世界と自分の区別がなくなり、 山...

| .HYAKKEI |

アプリで続きを読む

この記事の続きを読む